【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第17章 逢瀬
三曲踊り終える頃、これで切り上げようとイグニスに伝えた。
出口へ向かう間、あちらこちらから「もうお帰りになってしまうのかしら」「私もお誘いいただきたかったわ」と女性達の残念がる声が聞こえてくる。
この状況に、素直に喜べないやや複雑な感情を抱きながらイグニスのエスコートで私はその場を後にした。
そうしてようやく入っていた控室に戻り、スタッフにより重厚なカーテンが閉められたことを確認してからようやく一息をつく。
「ふぅ…」
「お疲れ様でした、グレイス王女。この後はどうなさいますか? お部屋に戻られますか?」
カーテンだけで遮られた空間ということを考慮してか、イグニスが言葉遣いに配慮して話しかけてきた。
こういう場は本当に誰が聞き耳を立てているかわからないからその気遣いはありがたい。
「うん…今日はそうさせてもらう。
…イグニスは? まだ沢山あなたのお誘いを待っている女性がいるようだけど、このまま帰るの?」
ダンスで繋ぎあった熱の勢いそのまま、イグニスに抱きつきたくなる気持ちをグッと噛み殺し、王女として返事をする。
本当は、こんなこと言いたくないのに。
「はい。王子命令ですから。
…ですが、グレイス王女がフロアに残っている女性をもてなせとおっしゃるのでしたらお部屋までお送りした後、そのように致します」
「戻らなくて結構です。
……イグニスの、意地悪」
イグニスに近づいて、小声でそう呟く。
それに対して僅かに口角を上げてフッと不敵な笑みを浮かべる表情にさえときめいてしまうんだから、我ながら重症だなと思った。