【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第17章 逢瀬
ーー片思いの時はまだ良かった。
グレイスはイグニスの恋愛対象外で、時折わずかな希望を感じつつも今以上の関係にはなれないと思っていたし、
イグニスは兄ノクティスの側近ではあるが、必要以上に王家の使命に縛られることなく、一人の男性としても幸せになってほしいと思っていた。
少なくとも、表面上はそうあろうと思っていた。
でも、同じ気持ちだとわかってからはダメだった。
狂おしい程の愛情と独占欲と嫉妬心が渦巻いて、どうしたらいいのかわからない。
イグニスに幸せになってほしいと願う反面、皆の前で彼の心は私のものなのだと知らしめて独り占めしたくなる気持ち。
そんなことをしても、彼と共に歩める未来など選べないとわかっているのに。
その事実がまたグレイスの胸を苦しめる。
でも今夜、この時だけは。
結論を先延ばしにしているだけとわかっていても、ひと時の夢に酔いたかった。
そして…今の二人が触れ合うには、理由がいるから。
グレイスはイグニスの手を、瞳に宿る熱を離したくない一心で二曲、三曲と続きをねだった。
手を取り合ってフロアで見つめ合う二人。
王女としての重荷を一時的に降ろし、ただ一人の女性としての幸せを享受するいたいけな少女のような笑顔。
それはこれまでグレイスが公の場で王女として見せてきた凛とした表情でも、大人ぶった表情でもどれでもなかった。
人々に様々な注目と憶測を抱かせつつグレイスとイグニスは心を通じ合わせ、他を寄せ付けない程の熱情を纏いながら、
今宵二人は言葉を介さない愛の逢瀬をたっぷりと周囲に見せつけた。