【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第17章 逢瀬
そんな想いを瞳に込めて見つめ返せば、キラキラと美しいペリドット色の瞳をより一層輝かせ、イグニスは目を細めて微笑んでくれた。
ちなみに。
彼が優雅な礼を披露し、甘い笑顔で瞳を輝かせたこの一連の流れの間、周りの女性達から悲鳴にも似た声が絶え間なく叫ばれてはいた。
けれども、正直大して気にならなかった。
だって、この笑顔も、仕草も、瞳に込められた熱も、
どれも全部…ひとつ残らず全部、
私だけに向けられているものだってひしひしと伝わってきていたから。
…誰にも見せたくなかったって気持ちは少しはあるけれど。
柔らかな弦楽器の音を響かせながらまた新しい曲の演奏が始まって、そっとイグニスの右手が私の肩甲骨下に添えられた。
反射的に背中を後ろへ反らす基本姿勢をとったところで、
私の耳元に口を寄せたイグニスにそっと囁かれる。
「目線はそうじゃないだろう? こっちだ。
グレイス…オレを見ろ」
(………!?)
心を震わせ、うっとりさせるような甘い声とその言葉に、今度は耳まで真っ赤になる。
バッと振り向いて『場所を考えて!』という恨み節を込めた目で見上げてみてもどこ吹く風。
「おや、グレイス王女どうなさいました? …あぁ、踊り出すのが待ちきれなくなってしまったんですね。
これは失礼致しました。さぁ参りましょう」
澄ました顔してこんなことを言う。
絶対、絶対にわざと勘違いしたフリをしてる!
(こんなにもあっさりと私の心をかき乱して。
必死に抑えようとしている好きって気持ちを煽らせて。
イグニスはズルい。本当に、ズルい。
でも…本当にズルいのは私、か…)
きっと真面目で誠実な彼なら、私が強く命じれば一切の恋慕の情を覆い隠し、ただただ従者として忠実に職務に徹してくれるだろう。
でも、そうしたくない。
彼からの気持ちに応えられないと言いながらも、こうして続けて向けられる想いにハッキリとした拒否を示さない私が一番ズルい。
だって…イグニスのことが好きだから。
二人で歩む未来はないとわかっていても長年断ち切れなかったこの気持ちに、突然差し出された手を完全に振り払うことなんて…すぐには出来そうになかった。