【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第17章 逢瀬
フロアに騒めきを起こしながら三曲目が終わり、ノクトお兄ちゃんは私を放り出して逃げ帰るように退出…なんてことはせず、
きちんと私やお父さん、周囲に礼を向けてから悠然とした足取りで出口へと向かっていった。
イグニスの影に隠れて見落とされがちだけど、ノクトお兄ちゃんもちゃんと気遣い出来る紳士だよね。
さすがに「抜ける」と宣言していたのもあって、王子に声を掛ける人もおらず、無事に帰れたのを確認してホッとした。
「グレイス王女」
その後ろ姿を見送った直後、大好きな人に名前を呼ばれて引き付けられるに声の方へ振り向く。
イグニスは、私としっかりと目が合ったのを確認してから、自分の胸に重ねていた右手をくるりと一周外回ししてから腰を折る、まさに王子様然とした優雅な一礼を向けてきた。
自分の魅せ方をわかってやっているのか、はたまた無自覚なのかはわからないが、その似合い過ぎる所作を見て一気に顔に熱が集まるのを感じる。
(この人は、ほんとに…っ!)
華やかなパーティー会場、煌びやかな衣装の人々を背景に背負い、身に纏った燕尾服も相まって、完全におとぎ話の舞踏会に参加している主役級王子様だ。
イグニスと踊るのはあの日、想いを伝えあった日以来。
言葉に出来ない感情や記憶が沢山湧いてきて、心臓がうるさいくらいドキドキして辛いくらいだけど、
「僭越ながらこの私、イグニスがグレイス王女のお相手をさせていただきます。
どうぞこの場を心ゆくまでお楽しみください」
そう言って恭しく差し出してくる左手を拒めるわけはなくて…
そこにそっと自分の右手を重ねた瞬間、イグニスの表情が変わった。
それは、これまでに何度も見てきた…愛おしいものを見つめるような甘い甘い笑顔。
瞳には、言葉に出せない熱を以前と変わらず灯したままで。
…いや、これまでとは違う。
隠していない。遠慮なく「好きだ」とその目が訴えてくる。
(あぁ、もう…。
あなたは本当に…
本当にズルいくらい格好良くて…
私の…大好きな人、だよ)