【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第17章 逢瀬
「うっし、さすがオレの側近は優秀だな!」
恐らくは朝からの式典に疲労を溜めた自分の主が抜けるに抜けられない状況を見て、気を効かせたイグニスがグラディオにも声を掛け女性達を動かしてくれたのだろう。
実際、二人がダンスの誘いを始めたのは、私達が入ってきた出入り口から対角線上に遠く離れた場所だったから。
その効果は絶大で、みるみるうちにそちらへ人が集まり、長身で、かつ見た目もダンスの技術も一級の彼らには大勢が注目し、今踊っている三曲目が終わる頃にはこっそりとフロアを抜けられるんじゃないかと思える状態になっていた。
(………でも)
否が応でも視界に入る、イグニスのリードを受け幸せそうに踊る女性。紳士的な上品な笑みを浮かべて白手袋越しとはいえ女性の手をとるイグニス。
(…この光景は正直…見たくなかったな)
せっかくの気遣いをこんな風に受け取ってしまう自分の狭量さが、
見たくないくせにイグニスがどんな顔して踊っているのか気になってそちらに視線を向けてしまう嫉妬深い自分が、
本当に嫌になる。
「…なんつー顔してんだよ」
そんな醜い感情を抱いていると、不意に聞こえてきたノクトお兄ちゃんの声にギクリとする。
そんなに顔に出ていたのだろうか。そんなつもりはなかったのに。
焦りと恥ずかしさで胸が苦しくなりつつも、三曲目ももう終わる頃。
控室に戻ったら、「変な顔してた? さすがに疲れてて。ごめんね」とでも言い訳しようかと考えていたら、急にノクトお兄ちゃんのリードの進行方向が変わり、イグニスの元へと近づいていく。
「おいイグニス!」
「はい。どうなさいましたかノクティス王子」
「オレはこの曲が終わったら抜ける。
でもグレイスはまだ踊り足りねーみたいだからお前が相手してやって。変な虫がつかないようにな。
これ、王子命令。いいな」
「承知しました」
(えっ、なんで…)
ダンスの最中に急に呼びかけられて一瞬不思議そうな顔をしたイグニスだったけど、王子命令の内容を聞いた後…少しだけ、ほんの少しだけ、でも確実に私に向けて…彼はその瞳を甘く微笑ませた。