【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第17章 逢瀬
手を取り合って踊り出してからも、もう緊張はしなかった。
ゆったりとしたステップやナチュラルターンから始まり、広いフロアを優雅に、時に兄妹らしくぴったりと息の合った足さばきで大きく駆け抜けていく。
特にテレスピンで勢いよく回ってドレスの裾を大きくふわりと宙に浮かせた後、スローアウェイオーバースウェイでゆったりとしなやかに背を反らせる緩急をつけたところは、周りから感嘆の声が聞こえてくる程で、とても気持ちよかった。
練習の成果を存分に発揮し心地良く踊り終わり、お父さんや、ゲストに向けて方向を変えて何度かお辞儀をする。
さぁこれでもう今日は帰ろう…と顔を上げたその時、ノクトお兄ちゃんがハッとした声で「やられた」と薄く声を出す。
何を? と思いながらノクトお兄ちゃんの視線の先を見ると…
私達がフロアに入ってきた時に通路スペースとして開けてあったスペースが、ない。
踊っている間にロープが片付けられてしまったようだ。
そして、元通路だった場所には人、人、人。
完全に人垣が出来ていて、ここに割って入って無理矢理退出するのはさすがにはばかられる状況が出来上がっていた。
(…やられた)
誰の策だか知らないけれど、最初から帰り道をなくして強制的にこの場に残らせるつもりだったのか。
そして…踊り終わった私達を取り囲むように男女問わず沢山の人がフロアに雪崩れ込んできた。
「っ、おいマジかよ」
この場にいる多くの女性は、踊る直前に私に見せたノクトお兄ちゃんの優しさが滲み出た笑顔に心ときめかせているかもしれないけれど、あの笑顔を誰にでも見せる程ノクトお兄ちゃんは社交的な性格では決してない。
その証拠に今のノクトお兄ちゃんの顔は我先にとダンスのお誘いを迫る女性陣の波に圧倒され、完ッ全に引きつっている。