【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第16章 決断
「私は…この国の王女だから…。
沢山の人の命と人生を捧げられて生きてきたから、それに値する人生を歩まなきゃいけないと思ってる。
いつまで経っても戦争が終わらないこんな時代だから…自分の身の振り方はわかってる。
だからといって、時代に求められる政略結婚の相手が決まるその時まで、って割り切って恋を楽しめる程、私は器用な人間でもないし、
それにイギーを付き合わせるなんて失礼なこと出来ない。
だから…イギーの気持ちには応えられない」
大切な父レギスや兄ノクティスが、魔法障壁という形で命を賭しても守ろうとするルシスを、グレイスも自分の命の代わりに人生を差し出し、同じように大切にし、守りたい・守るべきと考えるのは彼女にとって自然、かつ当然のことだった。
もしも、戦争のない時代だったなら。
もしも、ジェイクに責められた過去がなかったら。
もしも、テネブラエの惨劇がなかったら。
もしも、イグニスが花冠を渡した時、王女と従者としての一線を引かなければ。
もしも、もっと早くお互いの気持ちを素直に伝えあえていれば。
そうしたら、結果はまた違ったのかもしれない。
だが、そんなもしもの世界はここには存在しない。
全て、二人がここまで歩んで積み重ねてきた確固たる軌跡であり、事実であり、現実だった。
「ごめん…ごめんね、イギー…」
「いや…いいんだ。グレイスが謝る必要なんで少しもない」
嗚咽が止まらない程泣きじゃくるグレイスを、そっと頭を撫でながらイグニスが慰める。
あともう一歩、強く踏み出すには二人は優しすぎたし、
お互い自分の気持ちにフタをすることに慣れ過ぎてしまっていた。