【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第15章 ダンスレッスン
久しぶりのことに、つい過去に想いを馳せていたら、イギーの右手がそっと私の左肩甲骨の下を包むように添えられた。
その感触に意識を戻され、自分の左手をイギーの右上腕へと合わせた。
しっかりと抱き寄せられた姿勢に、安心感を抱くと同時に、みっともない嫉妬心が湧く。
エスコートから基本姿勢に導くまでのこの無駄のない滑らかな仕草。
これをものにするまで、彼はどれだけの練習をしたのだろう。
お相手は…どんな女性だったのだろう。同年代のキレイな女性とペアを組んだりしたのかな。
気になってしまったのはそこだった。
純粋に努力をして、その成果をもってレッスンに付き合ってくれている彼に対して我ながら最低だと思いながらも、ワルツの基本姿勢である背を反らせ、斜め左上を見ている状況に任せて聞いてみる。
嫉妬を浮かべたこの顔も、基本姿勢をキープしている限りイギーからは見えはしない。
「ねぇ…イギーはダンスの練習、どんな人としたの…?」
「オレか? オレも今グレイス達が習っている先生からだ。」
「…えぇっ!? そうなの!?」
全く予想していなかった答えに姿勢を保つのも忘れて思わずイギーの顔を見る。
「ん? あぁそうだが。そんなに驚くことか?
言っただろう、厳しいが腕は確かだと。あれはマンツーマンでみっちりとしごかれたオレの経験から出た言葉だ」
「あ、ぁー…そ、そ~うなんだ。
いや、お久しぶりのご挨拶もしてなかったからてっきり初対面なんだと思ってて…あはははは」
自分の心の小ささが恥ずかしすぎて声が上ずる。聞いた理由、絶対にバレたくない。
ちなみに再会のご挨拶は事前に済ませていたそうで。そうですよね、イギーだもんね、その辺はしっかりきっちり抜かりなくするよね。
はー…何か力抜ける~…
「こら、しっかり集中しないか。基本姿勢から大きく外れているぞ」
ぐっとホールドに力を入れられて慌てて姿勢を正す。
「ごめんごめん、ちゃんとやりますっ!」
「よし、いいか? まずは基本の動きをカウントでおさらいしていくぞ。まずはステップから…1、2、3、1、2…」