【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第15章 ダンスレッスン
そうして後日、私とイギーの二人はレッスンルームにやってきていた。
「グレイス、ちゃんと練習用の服を着てきてくれたんだな」
「それはもちろん。イギー先生の特別レッスンですから」
私の言葉に ふっ、と笑顔をこぼしイギーはいつものパンツスーツ姿からベストを脱いで、ミュージックプレイヤーのある棚の上に置く。
(背中、大きくなったなぁ…)
ふと視界に入ったイギーの後ろ姿。
シワ一つないシャツ一枚だけが覆う背中は、いつも以上に身体の厚みや筋肉の隆起が感じ取れ、イギー自身が身につけた男性らしさを伝えてくる。
(後ろ姿だけであんなに目を惹きつけるなんて、ほんとズルイ…)
イギーが褒めてくれた私の練習着姿は、姿勢や身体のラインがわかりやすいようシンプルでタイトなトップスと、踊った時のスカートの揺れや広がりを確認出来る裾がひらひらとしたロングスカート。
当然髪もきちんとまとめてきた。
「それはそれは。ありがとうございます。
ではグレイス王女、お手をどうぞ」
急にいつもと違う話し方にドキリとする。
ピンと伸ばした背筋に胸を張った堂々とした立ち姿。
背も大きく伸び、そろそろ180センチを超えようかとしている長身。
広い肩幅と、そこに乗るしっかりと鍛えられた筋肉が見事な逆三角形をつくり、彼をより良く魅せる。
それでいて顔立ちは内面から滲み出る知的さを纏い、
額にそってきちりと整えられた斜めの前髪のすぐ下には、育ちの良さを感じさせる気品漂う笑顔。
(だからほんっと、ズルイんだって…)
黒縁メガネの奥にある、美しい翠の瞳に見つめられ内心どぎまぎしながらも、差し出された彼の左手に右手をそっと重ねる。
(…あ。手、繋ぐのって久しぶりかも…)
先日のように抱きかかえられたり、ハグや頭を撫でられるということは最近もあったけれど、手と手を直接触れ合わせるのはいつぶりのことだろう。
同じことを想っているのか、重なった二人の手をイギーも一瞬目で捉え、その美しいペリドット色の瞳の奥が幸せそうに揺れた…、そんな気がした。
(いつ以来かな…ニンジンクッキー作った時? でもあの時触れたのは私の手の甲だから、手のひら同士はもっと前か…。
イギーの手のひら、大きくなったし、男性らしく硬くもなったけど…
ここから伝わってくる温もりは昔と変わらないな…)