【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第12章 ブルーローズ
その言葉を聞いた一拍後、グレイスがオレの肩に額をグリ、と押しつけ、大きな深呼吸の後
「ありがとう…私も大好きだよ、イギーお兄ちゃん…」と言葉とキスを返してくれた。
(あぁ…超えてはいけない一線がある立場だとしても、こんな特別扱いに加えて、兄という言葉を隠れ蓑にした気持ちを受け止めてもらえるなんて、オレは十分幸せ者だ…)
そう思い込み、そう自分を納得させて。
このままオレの立場も場所も忘れてずっとグレイスの体温を享受していたいという欲求には目を伏せて…グレイスの身体を離し、何とか別の話題を振る。
「そうだグレイス、新しく侍女になるヴァニラはいつからここに出入りするようになるんだ?
立場上関わることもあるだろうから一度挨拶しておきたくてな」
「えっ…。あ、あぁ…来週の四月一日からだよ。
…挨拶ね、わかった…。また連絡する」
「よろしく頼む。
それにしても…どうして移民の中から侍女を選ぶことを決めたんだ? 反対も多かっただろう」
王室の侍女ともなれば、時代が時代なら名家の子女が行儀見習いに仕えることもあったとも聞くし、
様々な場に出向く必要のある女主人をサポートするために、TPOに合わせた礼儀作法、ドレスコード、社交界のルールなどに精通していることが必要とされていて、
仕える方にもかなりの知識と教養を求められるものだ。
だから、今回のように家柄を考慮せず、唐突に移民の中から選出するなどということは、大抜擢を通り越して異例中の異例なのだ。