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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第3章 チェイスの賢い始め方※




「こういう事は、大事な人の為に取っておいた方が良い」

支度を整え、私が帰る為の資金であろうお金をテーブルに置くと、彼はそう言い残し部屋を去ろうとしたから。

「スコッチ!」

思わず、呼び止めてしまった。

「・・・何が、目的?」

ドアノブに手をかけたまま彼は、視線だけをこちらに向けて。

「別に何も。仲間が無理に仕事をする姿を見るのが、嫌なだけだ」

・・・そんな奇特な人間、こんな組織にいるはずがない。

ただ、彼の言葉が嘘ではないという根拠の無い確信があるのも、また事実。

「待って」

私を見逃す、その理由が知りたくて。

座っていたベッドから立ち上がると、彼に駆け寄り服を掴んで引き留めた。

「私の弱みを話さないという、確証がほしい」
「・・・・・・」

そんな確証は、どこか得ているのに。
彼がこの問題にどう応えるのか。

それが、純粋に気になった。

「・・・じゃあ」

執拗いせいか、彼は溜め息を吐くように喋りながら振り返ると、徐ろに私の手を取って。

「!」

その手に彼が持っていた私の拳銃を握らせると、その銃口を自身の額へと押し当てた。

「ここで俺を撃ったらどうだ?」

そう言った彼は、酷く余裕そうな笑みを浮かべていた。

彼もまた、私が撃たないと確証を得ているような表情と、声色だった。

「そうすれば永遠に口は塞がれる」

・・・もしかして。

彼は、私が撃たないのではなく、撃てないと分かって言っているのだろうか。

「・・・ふざけないで」
「ふざけてこんな事しない」

・・・私を泳がせ、もう少しボロを出させて、確実に引きずり出す為の罠だろうか。

「・・・・・・」

そう考えていると、視線は自然と鋭いものになっていたようで。

「分かったよ。そんな目で見ないでくれ」

彼は突然、降参だとでも言うように、私の手を掴んでいた手をパッと離し両手を上げた。

「俺が君を脅すことは無いし、リークするつもりもない。今日ここでは何もなかった」

そして、そう言葉を続けると、再び私に背を向け隙だらけの姿勢を見せた。



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