第3章 チェイスの賢い始め方※
「・・・・・・!」
けれど、手を伸ばした先には何も無く。
そこに置いていたはずの銃が無くなっていた。
「探しているのはこれか?」
「!」
それを確認する為、一瞬視線を枕元の方へと向けた直後。
スコッチからそう言われ視線を戻すと、彼の手に私の銃がぶら下がる光景が、目に飛び込んで来た。
リスクはあったが、万が一と思って置いていたけれど。
残念ながら良い方には転ばなかったようだ。
「ハニートラップを仕掛けるなら、相手から目を離しては駄目だ」
・・・あの時か。
何度も唇を落とされ、思わず瞼を閉じた瞬間が何度もあった。
その瞬間に、奪われていたのか。
「別に、貴方に仕掛けた訳じゃないわ」
あくまでも、捨てる行為の為。
けれど結果としては、私の方が彼に仕掛けられたような形になっている気がする。
「そうか。てっきり俺を始末しに来たのかと思ったよ」
・・・本当にそう思っているのなら、その方が都合は良い。
「・・・始末される覚えがあるの?」
「そりゃあ、こういう組織にいれば山程な」
けれど、私を見る彼の目は、疑いの眼差しにしか見えなくて。
きっと、スコッチにはこれから私のことを探られる。
その前に組織を去ろう。
元々、そこまで長くいるつもりはなかったのだから、少し期間が早まったと思えば・・・。
「とにかく、君がどうして組織にいるかは聞かないが・・・こういう事をするくらいなら、これからは負担にならない仕事を回す」
「・・・は?」
銃も奪われ、これからどんな言葉で脅されるのかと思っていたが。
彼は私を気にするような言葉を口にしながら、徐ろに立ち上がった。
「何を言っ・・・」
「俺が、見たくないんだ」
その辺りに置いていた衣服を順番に身に付けていきながら、彼は静かにそう言って。
私に背を向けるその姿は、無防備極まりない。
その瞬間、彼の言葉が嘘ではない事は分かっていた。