第3章 チェイスの賢い始め方※
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3年半程前。
「スコッチ」
「・・・どうした、ウェルシュ」
いつもの場所で、バーボンと話すスコッチに声を掛けた。
最近はこの2人とライを交えた4人で任務をすることが多くなっていて。
その中でも、私はスコッチやライと仕事をする事が比較的多かった。
「ちょっと、2人で話したいんだけど」
・・・あくまでも自然に。
そう自分に言い聞かせながら声を掛けると、スコッチはバーボンと一度アイコンタクトを取った。
「バーボン、後で」
「ああ」
・・・この2人もペアでの仕事はよくしているが、それ以外の時もよく一緒にいる。
彼らは他の組織の人間とは少し違う匂いがする。
だから、こうして彼を選んだのかもしれない。
「・・・で?どうした」
「・・・・・・」
とある路地裏。
そこに彼を連れ込むと、早急に用件を求められ、途端に心臓は鼓動を速く強めた。
「・・・ウェルシュ?」
バクバクと音が聞こえてきそうな心臓を抑え込むように、胸元の服を握って。
その中々落ち着かない心臓に数秒固まってしまったせいで、スコッチから様子を伺うようにコードネームを呼ばれた。
決意を固めてきたはずなのに。
いざとなると、躊躇してしまった。
「・・・スコッチ」
でも、もう。
後戻りはしない。
「私を・・・抱いてほしい」
「・・・!?」
ただ勢いのまま、私は彼に用件を伝えた。
「ウェ、ウェルシュ・・・!?」
流石に戸惑い慌てた様子の彼に、冗談ではないことを示すように視線を送った。
彼もそれを見て何かを察したのか、数秒後にはいつものスコッチへと戻っていた。
「どうしてオレなんだ。そういう事は、ライやバーボンの方が適任だろ」
確かにそうだ。
だから最初は、2人の内のどちらかに声を掛けようとしたけれど。
ライには流石に言い難い。
バーボンは作業的にしてはくれそうだが・・・あの男に抱かれるのは、少し癪だ。
それに、弱みを握られそうで嫌だった。