第3章 チェイスの賢い始め方※
「それに、今のバーボンの情報は手に入れにくい状況ですからね」
それは、そうだろうな。
もう少し穏便に動けば、多少はできた気もするけれど。
何故わざわざ、目立つ行動をするのか分からない。
「沖矢さん、コナンくん以外に協力者は?」
「貴女がいます」
しらばっくれているのだろうか。
「・・・そういうことではなく。単独行動なのかと聞いているんです」
それは限りなく無い、とは思ったが。
この男が何の目的で動いているのかハッキリしないのに、単独で動くのは少し不可解と言うのか、非合理的過ぎると思って。
「存外、貴女と同じかもしれませんよ?」
「・・・・・・」
そんな訳ない。
私達の中にこんな男がいれば、すぐに分かる。
一度見れば忘れるはずもない。
そもそも、会ったのはこの間が初めてと言ったのはこの男だ。
目的も私と同じと言っていたが、証拠は無い。
それに、本当にこの男は私の正体を・・・。
「まさか貴女が、ビ・・・」
「沖矢さん」
・・・しまった。
言葉の途中でこんな遮り方をしてしまったら、認めたも同然じゃないか。
盗聴を気にし過ぎてしまった所もあるが、私達のことを言葉にされるのに少し抵抗があった。
「・・・もういいです。こちらに不利にならない内は協力します」
「助かります」
条件はこれでもかと出したのに。
こちらばかり不利になっているような気がする。
それはこの男ができるからではなく・・・私ができない人間だからだろうな。
「スコッチといえば・・・彼に、頼んだそうですね?」
徐ろに話を変えた沖矢さんは、何を考えているのか分からない笑みを私に向けながら、余裕の態度を示した。
「貴女の初めての経験を、貰ってほしいと」
「・・・・・・」
一体スコッチは、どこまでこの男を信用し、情報を吐いていたのだろう。
寧ろこの男にあげていたのは、私の情報だったのではないかと疑いたくなる程で。
「それで?彼に捧げたのですか?」
・・・思い出させたくないことを思い出させるのだな。
人の事を不快にさせる才能は、抜群のようだ。