第3章 チェイスの賢い始め方※
「・・・では聞きますけど、スコッチとはどこで?」
「おや、そんな事が聞きたかったんですか?」
・・・挑発、だとすると乗ってはいけない。
ただでさえ最近は私情が働き過ぎているのだから。
自分を落ち着けるように軽く息を吐いていると、彼は一度口角を上げてから質問に答え始めた。
「組織にいる頃、情報交換をしていました」
組織にいる頃・・・ということは、やはりこの男も組織内にいたのか。
・・・だとすると、その時にこの男を見ていたのだろうか。
「お互い、スパイだと知っていたということですか?」
「いいえ。あくまでも組織内での情報交換ですよ」
仮に知っていたとすれば・・・この男もスコッチや私のように、ライが始末していただろうか。
まあ、私は少し形の違う始末だったが。
・・・いや、違うのは、スコッチの方というべきか。
「実は貴女のことも、その頃にスコッチから伺いました。姿を見たのは、先日の事件が初めてですけどね」
やはりあれはスコッチからなのか。
まさか彼に喋られるとは。
始末された時、公安と聞いて半ば安心していたが。
買い被りすぎたか。
「・・・沖矢さん、コードネームは?」
「残念ながら与えられませんでした。スコッチが始末されてしまった頃、バレる前に身を引かせて頂きました」
コードネームを与えられなかった?
あれだけの技量があって?
ということは、この男・・・わざとコードネームを貰わず、スコッチのような中枢の人間から易々と情報を仕入れていたということか。
やりそうな人ではあるが。
「・・・・・・」
でもだとすると、スコッチは何の為に情報を渡していたのだろう。
彼は日本の犬だった。
情報を貰えるとはいえ、リスク以上のメリットは感じられないが。
それ程、必要な情報だったのだろうか。
「そもそも、スコッチと知り合いならバーボンのことも、よくご存知なのでは?」
「そうでもありませんよ。情報交換をしていたのは、あくまでもスコッチだけですから」
スコッチの単独行動か・・・あまりそんな事をするような人ではないと思ったけど。
聞けば聞くほど、この男もスコッチも、分からなくなる。