第3章 チェイスの賢い始め方※
「まあ、彼の方がよく知った仲ですしね」
「・・・まだ会って2週間程です」
まるで拗ねた子どものように、変な事を言う。
確かにバーボンは数年前から知ってはいるが、今の私とは会ってその程度だ。
「それで、何の為に呼んだんですか」
まさかそんな話をする為に呼んだのではないだろう、と目で聞けば、彼は指を顎に添え、ソファーへと体を預けた。
「本当は、貴女とお茶がしたかったんですけどね」
読めない笑顔のまま、彼がそう言うから。
思わず眉間にシワが寄った。
「・・・帰りますよ」
「まあ、そう急がずとも」
私だって暇ではない。
それに内心、少し焦りの様なものが出てきている。
沖矢さんとここで会って以来、あの人と連絡が取れなくなっているから。
指示をもらう事もできず、ただ手探りで動く他無かった。
「今一度、我々の関係性をはっきりさせておきませんか」
・・・関係性、か。
そんな物、あるようで最初からない物なのに。
「貴女はバーボンから情報を搾取する。それを僕と共有して頂きます」
「・・・・・・」
今更、そんな話をして何になるのか。
「その為にこちらは3つの条件を飲みました」
私達はあくまでも互いを利用するだけの関係。
「組織に対するこちらの目的は・・・」
「沖矢さん」
そこにそれ以上は、無いのだから。
「何が言いたいんですか」
彼の言葉を遮るように名前を呼べば、自然とそれは止められた。
彼を睨むように見つめ、早く本題に入れと表情も入れ込んで伝えると、彼はフッと小さく笑いを零した。
「・・・貴女も、僕に聞きたい事がありそうでしたので」
「・・・・・・」
そう話すこの男の表情には、余裕しか感じられなくて。
それが酷く腹立たしい。
こちらはこの男の素性を何も掴めていないのに。
相手は私のことを多少なり掴んでいる。
・・・この男と話せば話す程、私の無能さを突きつけられているようで、嫌だった。