第3章 チェイスの賢い始め方※
「でも、断ると言うのでしたら・・・」
そう切り出す、敢えての条件にこちらも僅かに身構えた。
現時点、こちらのメリットが無い状況で何を言われるのだろうか。
なんて。
「僕とお付き合いして頂けますか?」
そんな強く身構えた自分を、恥ずかしく思うような答え。
「・・・言っている意味が、分かりません」
何故、この協力を拒んだ場合、彼とそういう関係にならなければいけないのか。
協力してもしなくても、私にはデメリットしかないじゃないか。
「つまり、男女の関係に・・・」
「そういう事を言っているんじゃありません」
・・・頭が痛くなってくる。
さっき手合わせをした際、それなりにできる人物だと思ってしまった過去の自分を殴りたい。
まともな会話もできないこんな人間に、私は地面へ手をつかされたのか。
「では、貴女の条件を提示してください」
・・・NOと言わせない。
私がここで条件を出せば、必然的に彼と協力体制をとる事になってしまう。
けれど、向こうがこちらを利用するというのなら。
「分かりました。こちらからの条件は3つです」
こっちだって、利用できる所まで利用してやる。
「1つ、私がこの協力が不必要と感じたら、すぐに関係を切ってください。これは如何なる理由も適用とします。お願いでは無く条件、命令です」
但し、こちらが不利になるようなことは絶対に。
「2つ、私に不必要に近付かないでください。変に思わせぶりな言葉も掛けないでください」
・・・させるものか。
「3つ目、そちらが得られた情報も共有してください。こちらが欲しいと言ったものは全てです」
外部の人間は誰であっても信用はしない。
それは内部にも言えることだけど。
「中々、手厳しい」
「これが飲めないのなら、協力はしません。そちらから条件を出せと言ったんですから」
彼も同じはずだ。
だから利用と言ったのだろう。
それに、私に恋愛感情を持たせれば取り入りやすくもなる。
彼の作戦だということは重々承知の上だ。
だから私は決して本気にしない。