第3章 チェイスの賢い始め方※
いや、そもそも。
「・・・仮に協力したとして、こちらにメリットを感じられないんですが」
バーボンの餌となり、情報を取って共有する。
でもその共有は、そもそもしなくても良いものだ。
わざわざ情報を渡す必要が、どこに・・・。
「ですから、そちらの出す条件をお聞きしたいです」
・・・何とも都合が良いというのか。
賢いやり方、というのか。
「情報が欲しければ、こちらの持っているものをお渡しします。勿論、金銭を要求するのでしたらできる限りお応えしますよ」
仮にこちらが莫大な金額を要求すれば、出すのだろうか。
「・・・・・・」
いや、違う。
彼は私が金銭を要求しないことを分かっているんだ。
主導権がこちらにあるようで、殆ど向こうに握られている。
それが酷く癪に障る。
「・・・少し、時間をください」
やはりとりあえず、あの人に連絡を取らなくては。
一度この車を降りて、話はそれからだ、と思っていた矢先。
「いえ、そうはいきません」
「・・・!」
走らされていた車は突然、進行方向を変えて。
その反動に体を僅かに傾けながら外に目をやると、車は高速道路の入口へと向かっていた。
「・・・っ」
やられた。
高速道路に入られると、車から飛び降りるに飛び降りれない。
怪我をする前提で飛び降りることも可能だけど。
限りなく自殺行為に近い。
「今すぐ、答えをください」
悪魔だ。
彼の笑みは率直でそう思うくらいに、私の目には史上最大に悪く見えた。
「・・・・・・」
どうしたものか。
・・・いや、どうもこうもないか。
「もし、断ったら・・・私を消しますか?」
こういう行動を取ったということは、そういう事なのだろう。
と、思っていたけれど。
「断られると思っていなかったので、その場合はまだ考えていません」
斜め上の答えに、思わず声が出そうになった。
掴み所がない彼を見ながら、まともな会話は期待できそうに無いな、と素の表情を出して。