第3章 チェイスの賢い始め方※
「ところで、私のことはどこまで知ってるんですか」
話を変えるように問いながら、こっそりとスマホを取り出して。
彼の視線がこちらに無いことを確認しながら、あの人へと電話を掛けた。
「・・・・・・」
けれど、何故か電話はすぐに切れてしまったようで。
というよりは、最初から繋がらなかったようだ。
「貴女が以前、ウェルシュとして組織にいたことは、スコッチから聞いています」
そのスマホを気にしつつも、沖矢さんとの会話も耳に入れて。
やはり、スコッチと知り合いということは。
「・・・沖矢さん、もしかしてこの国の犬じゃありませんよね」
つまりは、潜入していたスコッチと同じ、日本の警察官なのかと尋ねていて。
ライがスコッチを始末した時、理由を聞けばそう答えたから。
でも、沖矢さんは表情を変えないどころか、その質問に笑みを深める一方で。
「先程も言いましたが、僕はただの大学院生です。それ以外の何者でもありません」
頑なに、そうとしか言わなかった。
どうやら詳しい素性は、こちらで調べる他無さそうだ。
「因みに、坊やは貴女を色々と疑っているようですよ」
それは別に構わないし、寧ろ勝手に想像してくれていても構わないけど。
「私はそんな事よりも、何故コナンくんが組織について知っているかが聞きたいですね」
私のことを探ったり疑ったりしているということは、一応の警戒心はあるということで。
誰であれ、信用し過ぎていないということに安心感を覚えた。
先日の事件もそうだが、彼は簡単に人について行ってしまうから。
「彼も訳アリのようですよ。知りたければ、本人から聞く方がよろしいかと」
聞けないからこうして聞いているのに、という反論はもう面倒だからしないが。
早急に、その訳というのを知る必要はあるだろうな。
「・・・・・・」
仮に沖矢さんが犬・・・つまり日本の警察官だった場合、かなり厄介なことではある。
協力するかどうか、やはり私の一存では決められない。