第3章 チェイスの賢い始め方※
「目的は、貴女と同じですよ」
・・・同じ。
その一言で、こちらが追い込まれたような気にもなった。
私の目的がバレている、と言われたも同然だから。
「その為に僕は今、坊やとも手を組んでいます」
そう言いながら沖矢さんは前を向き直して。
一瞬、彼の言葉が弾き返されたが、冷静になって脳内でもう一度それを繰り返した。
坊や・・・とは、もしかして。
「コナンくんですか・・・!?」
それを聞けば更に分からなくなる反面、点と点が繋がる面もあって。
「ええ。先日は、彼から貴女を探ってほしいと言われたものですから」
・・・だから、彼はポアロであの様子だったのか。
正々堂々、正面から私に探りを入れに行くとは、コナンくんも思わなかったのだろうな。
私も、沖矢さんが考え無しで正面から突っ込んでくるような人には思えない。
「では、言い寄ってきたのも私を動揺させる為ですか」
だとすると、こうやって接触するのは早急過ぎたと思われるが。
そう考えながら問うと、赤信号が青信号へと変わり、車は再び静かに発車されて。
「いえ」
それと同時に聞こえてきたのは、私の言葉に否定する言葉。
だったら理由は何なのかと視線で問えば、街灯を横切る度に彼の横顔を怪しく照らす姿が目に入った。
「これは完全に私情です」
その笑みは何を考えているのか分からず。
「本当に、ひなたさんに惚れたんですよ」
「・・・ッ」
それが本音なのか、更に動揺を誘うものなのかすら。
今の私には判断ができなかった。
「・・・率直に聞きますけど、沖矢さんのその・・・一目惚れというものがなければ、私は声を掛けられなかったということですか」
自分で言っていて、何を言っているのか分からなくなる。
自惚れた質問のようだが、彼は明言したのだから間違ってはいない、と言い聞かせるように質問を重ねた。