第2章 瓶詰めの記憶の流れ先※
「少なからず、意識はしてくれていますよね?」
「・・・っ」
していない、というのは完全に嘘だ。
でもそれは彼がバーボンだからとか安室透だとかという意味では無くて。
彼が、1人の男だから・・・だ。
「・・・聞きたいことが2点あります」
「・・・?」
この空気で、彼は突然そう言い出して。
確信をつかれるのではと、一瞬にして体は身構えた。
「1点目。お言葉に甘えて、というのは口癖ですか?」
「え・・・」
でも、1つ目の質問は予想の斜め上のもので。
自分でも考えた事がなかったようなことを聞かれ、思わず拍子抜けした声を漏らしてしまった。
「あ、あまり気にしたことがないです・・・」
彼が何故そんな事が気になったのかは分からないが、そうだとすれば直した方が良いかもしれない。
何かに置いて、印象をつけられるのは良くないから。
「では、2点目」
まるで尋問されているような気がする。
彼の目が、私を捕らえて離さず、どこへも逃さない。
身体的にも、心理的にも、追い詰められていた。
「これをあの男に知られたのは、どうしてですか?」
首元まで上がっていた私の服の襟を、ボタンを上から数個外しながら彼はそう尋ねてきて。
「お、沖矢さんですか・・・?」
あの男、というぼんやりとした人物の名前を口にすると、一瞬空気がピリッとした気がした。
「・・・ええ」
どこか嫌悪にも感じる声色で返事をされると、影になっているせいか、安室さんの眉間に皺が寄ったようにも見えた。
「昨日ポアロに来た時、たまたま見えてしまっただけ・・・です」
それ以上、説明することはない。
そもそも何をそんなに気にする必要があるのか。
「・・・それ程、親密な関係なんですか?」
「し、親密じゃありませんよ・・・!」
心外だ、と僅かに声を張って言い返せば、暫くあの目で見つめられて。
数秒捕らわれた後、彼の手が徐ろに私の方へと近寄ってきた。