第2章 瓶詰めの記憶の流れ先※
「そうでしたか。僕はてっきり、意識してくださったのかと」
あながち間違いではない。
・・・これは、正直に言っても良いのだろうか。
言えば、そういう雰囲気になるのだろうか。
今日もまた、ぶっつけ本番だから。
手探りで進むしかない。
「残念ですが違いますよ。それより、お鍋大丈夫ですか?」
襟に伸びていた彼の手を優しく外しながら、注意を背後の鍋へと向けて。
おっと、と声を上げながら鍋に視線を向けた安室さんの背中を見て、一番に感じたのは、間違いなく安堵だった。
やはり私に、こういうことは向いていない。
でも私達は向いているいないで仕事をしていない。
選択肢なんて、あるようで最初から無い。
ーーー
「どうぞ、お好きなだけ食べてください」
「あ、ありがとうございます」
机いっぱいに並べられたそれに、流石に目を見開いた。
圧巻というのか、呆気というのか。
量はやはり、確実に2人分ではない。
「あの、折角なので料理の写真を撮っても良いですか?」
「構いませんよ」
食事の前に軽く片付けを始めた彼を見ながらスマホ片手に尋ねれば、笑顔で許可をくれて。
再びお礼を口にすると、即座にカメラモードをオンにした。
「・・・・・・」
ただし、起動するのはインカメラだ。
料理を撮影するフリをしては、背後の部屋をそれとなく無音カメラで数枚撮影した。
ただ、後日彼から写真を見せてくれと言われても良いように。
料理の写真も、数枚撮っておいた。
変に間が空かないように、無音に有音を織り交ぜながら撮影をして。
素早くそれらをシークレットフォルダに入れると、静かに座り直した。
「お口に合えば良いですが」
そう言いながら、片付けを終えた安室さんは私の向かい側へと座って。
2人で手を合わせては食前の挨拶をした。
定番の物から料理名の分からないものまで、様々な物が並んでいる。
その中から何気無く、私はだし巻き玉子を選んで口にした。