第2章 瓶詰めの記憶の流れ先※
「!」
が、その腕は安室さんに掴まれてしまって。
「ひなたさんは、休憩に入ってください。コーヒーは僕が入れますし、賄いもすぐに持って行きますから」
笑顔、だけれど。
どこか張り付いたようなそれに、背中にゾクッとした何かが走った。
「だ、大丈夫ですよ・・・少しくらい。安室さん、先に休憩行ってください」
今、彼らを2人きりにしてはいけない。
ただその一心で、やり過ごそうとした。
「いえ、下心のある男性と2人きりにさせるのは危険ですので」
辛うじて、笑顔を保っている状態。
でもいつもよりは崩れてしまっているだろうなとかんじながらも、何とかそれを持ち直して。
「で、ではコーヒーは私が入れますので、安室さんは賄いを頼んでも良いですか?」
元々彼が作ると言っていた為、彼にそう提案したのに。
「・・・分かりました。でも折角なので、ひなたさんに賄いを頼んでも良いですか?」
折角、の意味がよく分からないが、結局賄いは私が作ることになってしまった。
それに関して別に問題は無いけれど。
この間に、沖矢さんが何食わぬ顔でカウンター席に腰掛けたのは、ある意味問題かもしれない。
「おや、今日はひなたさんが入れたコーヒーではないんですね」
「・・・ご不満ですか?」
店の中で言い合いをしないでほしい。
そう心の中で何度目か分からないため息を吐くと、安室さんに言われた通りに賄いを作り始めた。
「そういえばひなたさん、今夜空いていますか?」
「・・・え?」
適当に材料を取り出し、並べ終えた頃。
沖矢さんに突然そんな質問をされた。
「どうしてですか?」
ああいう質問は、大多数の人が困ると思うのだが。
空いているかと問われても、その内容次第では空くかどうか変わってくる。
引き受けたくない、若しくは入れたくない予定だった場合、先に空いていると答えていては後に断りにくい。
だから先に用件を伝えてから、空いているかどうか尋ねてほしいものだけど。
仕方なく、それは先に直接聞くことにして。