第2章 瓶詰めの記憶の流れ先※
「それ、は・・・」
別に知られて困るということではないのだけど。
あまりにも強く来られて、戸惑いが隠せない。
「失礼、こちらから名乗らなければいけませんよね」
そういう問題でもない気がするが。
「僕は、沖矢昴といいます」
そう名乗られては、こちらも言わない訳にはいかない雰囲気になってしまって。
「・・・如月、ひなた・・・です」
戸惑いながらも、名前を伝えた。
その私の様子を見たせいか、彼は内ポケットから徐ろに何かを取り出すと、そっとカウンターの上にそれを置いてみせた。
「僕は東都大学の学生でして」
身分を明かせば、私が安心すると思ったのだろうか。
確かに彼の思惑通り、それを聞いて多少は気持ちが落ち着いたけれど。
「沖矢・・・さん」
見せてきたものは、彼の学生証で。
大学院工学部・・・どうやら学生というのは嘘ではないようだけど。
でもそれは、これが本物だった場合の話だ。
「実はここを教えてくれたのは・・・」
その学生証を内ポケットにしまい込みながら話していると、ポアロのドアベルがお客さんの入店を知らせた。
「あれ、昴さん!?」
入店してきた彼・・・コナンくんは、私が声を掛けるより先に、沖矢さんを見て驚いて声を上げた。
「どうしてここに?」
「君が教えてくれたのだろう?」
そう、か。
教えたのはコナンくんだったのか。
にしても、小学生と大学院生・・・一体どこで出会ったのだろう。
「そうだけど・・・」
歯切れの悪い言葉を口にしながら、コナンくんは何故か私に視線をチラリと向けて。
この大学院生、変わった人だとは思ったけれど。
どうやらそれだけでは無さそうだ。
「ひなたさんと坊やが知り合いと聞いて、この場所を教えてもらい、早速貴女に会いに来ました」
そう言った沖矢さんに、コナンくんは酷く焦ったように視線を向けて。
「私に・・・?」
私がポアロに居ることを伝えたのがコナンくんというのは分かったが。
そもそも何故、沖矢さんが私のことを知っているのか。
「・・・・・・」
・・・まさか。