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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第2章 瓶詰めの記憶の流れ先※




「・・・ッ」

安室さんの顔が、すぐ近くにある。
気配で分かるくらいには、そこに。

もうこうなったら、どうしようもない。
早く捨てなかった私が悪い。

そう、1人勝手に腹を括った時だった。

「っ、ん・・・!」

鎖骨と肩の間辺り。
そこへ、頬にあった彼の手が移動したかと思うと、柔らかい別の感触を受けた。

かと思えば、チクリと刺すような僅かな痛み。

その痛みが数秒続いた後、ぬるっとした生暖かい感触がそこを撫でた。

「あむろ、さ・・・っ」

それが妙に体を疼かせる。
何もしていないのに、息が上がる。

彼がそこに舌を這わせたのだと気付いたのは、満足そうにそこから唇を離す様子を見た時だった。

「・・・そんな顔、安易に見せてはいけませんよ」

目が合ったその瞬間。
彼の目は安室透と名乗った時とは違うものになっていて。

背中にゾクッとした何かが走り、脳内で警告音が鳴り響いた。

「歯止めが聞かなくなります」
「!」

そう言いながら、彼の手が服の裾からゆっくり入ってきて。

指が腹部に触れ、徐々に上へと登ろうとしてきた瞬間、体は急激に力を取り戻した。

「だ、だめです!」

掴まれていた両手を振り解き、軽く彼を突き放した。

「安室さんきっと疲れてるんです・・・っ、早く休んでください・・・!」

震える体を抑え込み、彼の体を押すと玄関から廊下へと無理矢理押し出して。

「お、おやすみなさい・・・!!」

そのまま彼の顔も見ず、勢いよくドアを閉めた。

直ぐに鍵とチェーンも掛け、荒くなった息を落ち着かせるように、長い呼吸を何度か繰り返した。

「!」

数秒、ドアノブを握ったままバクバクと一向に落ち着かない心臓の音を感じていると、ドアを突然数回ノックされて。

「・・・おやすみなさい」

最後に優しい声でドア越しに、そう聞こえてきた。

その声は体に溶けるようにスッと染み込んで。
さっきまで落ち着かなかった心臓と呼吸が、嘘のように静かになってしまった。



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