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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第2章 瓶詰めの記憶の流れ先※




「もしかして、キスの経験が?」
「・・・っ」

彼は数え切れない程して来ているのだろうな。

もし私としても、きっとそれは数ある中の何でもないその1つにしか過ぎなくて。

「ありますよ・・・キスくらい・・・」

こういう時、目線は動かしてはならない。
逸らすことは勿論、泳がすなんて言語道断で。

ただ静かに相手の目を見て、落ち着いてものを言う。

相手はバーボンだ。
その行動も、悟られないように行わなければならない。

「でも、安室さんとはできません」
「・・・それは、思いを寄せる人がいるからですか?」

彼の笑顔が・・・僅かに変わった。

少し冷たさを感じるような、緊迫感が押し寄せてくる笑顔だ。

最早これを笑顔と呼んで良いのかも分からない。

「・・・それもありますけど、本当に好きな人としかしたくはありません」

これは本音だ。
こんな仕事をしていて、組織ではハニートラップを仕掛けていた私が。

この年でファーストキスを未だ捨てきれずいる。

それは、私が初めて体を預けた人に言われたからだ。

『君の唇は、本当に好きな奴に捧げろ』

それを律儀になんて守らなくて良いことは分かっている。

でも、その人のことは。
・・・多分、好きだったのだと思うから。

「では、絶対に僕のことを好きにさせると約束しますので、しても良いですか?」

・・・この男、どういうつもりなのだろう。

「どうして私なんですか・・・」

仮にウェルシュだった私を捕らえに来たのであれば、この行動は強行過ぎる。

慎重派だった彼からは到底想像できない行動だ。

「好きだから、以外に理由はありません」

そう言いながらゆっくり手を取られると、彼の片手で頭上に纏められた。

「ひなたさんを、手に入れたくなってしまったんです」
「・・・っ」

もう片方の手が、私の頬を包んで。
再び、彼の顔が近付いて来た。

僅かに顔を逸らすが、引く様子は無くて。

こんな事なら、あの時・・・体を預けたあの日、唇も奪ってくれれば良かったのにと、ギュッと固く瞼を閉じた。




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