第2章 瓶詰めの記憶の流れ先※
「っ!」
ドアの間に手を入れられ、閉まりかけたそれがゆっくり再び開かれた。
開けたのは勿論、数秒前に就寝の挨拶をしたばかりの彼で。
「どうしたんですか・・・」
完全に油断していたせいか、肩を震わせ驚いてしまった。
それを情けなく思いつつも、そのまま戸惑った様子で自分を纏った。
「先に謝っておきます。すみません」
「な、何がですか・・・?」
部屋に入られるのは少しマズイ気もしたが、力で敵うはずもなく。
彼は部屋に一歩足を踏み入れると、そのままドアを閉じてしまった。
「僕は、絶対に引きませんから」
私を追いやると、そのまま壁に手をついて腕で囲って。
彼はこうして、心の逃げ道も無くしていくのか。
「・・・っ」
安室さんの指が、頬をそっと撫でる。
その瞬間、体は硬直したように動かなくなった。
「どんな手を使ってでも、手に入れてみせます」
・・・それは、バーボンとして、ウェルシュだった私を、という意味だろうか。
いや、それ以外にどんな意味が。
「あ、安室さ・・・」
頬を滑った指は顎へと向かい、それをクッと上げられると、嫌でも視線を合わせられた。
こうして女性から情報を搾り取ってきたのだと思うと、女性側も酷く哀れに思ってしまう。
「!」
顔が、近付いてくる。
まさか今この段階で、そこまで強行的に出てくるとは思わなくて。
どうしよう。
なんて戸惑いはあったけれど。
気付けば、咄嗟に彼の口を塞ぐように自身の手を押し当てていた。
「さ・・・流石に、怒りますよ・・・」
でもこの行動は、私の立場的に完全なるアウトな行動で。
本来ならキスの1つや2つで動揺してもならない、のに。
・・・以前、あの人に言われた言葉なんて忘れ捨ててしまえれば良いのに。
もう、彼から貰うことはできないのだから。
「すみません、だから最初に謝っておいたんですが」
そういうのは屁理屈と言うのだと僅かに睨むが、彼は余裕そうな笑みを崩さないまま、私の手を取り払い壁に押し当てた。