第13章 ノーカウントの数え方※
「な・・・っ」
そんな所に口づけるなんて、と勢いよく振り返った時、彼の綺麗な顔が眼前に突き付けられて。
思わずそれ以上の言葉を引っ込めてしまった。
大型犬と子犬のような構図になっていると、体は気付けばベッドに倒されていた。
彼が押したり物理的に力を加えたのではない。
目力の、その圧力だけで押されてしまった。
「触れても、構いませんか」
もう一度、腹部を下の方からゆっくりと指でなぞり直して。
ゾクゾクとする感覚に顔を歪めてしまい、それを見られてくなくて腕で顔に蓋をした。
「き、聞かないでください・・・」
もういっそ、ここからは言葉なく進めてほしい。
ただでさえ、心臓が破裂してしまいそうなのに。
「同意の無いことはしたくありませんので」
警察官故なのか、彼が律儀すぎるのか。
それとも単なる意地悪なのか。
「本当に嫌なら、呼びますから・・・っ」
彼が出した条件が、色んな意味で本当に機能するのかは分からないが。
もう、後戻りはできないから。
「・・・了解しました」
了承が得られた彼の手は、ゆっくりと傷跡をなぞっていくように、上ってきて。
・・・そういえば、ここは昴さんにも触れられたことがない、と今更気付いたことに怖気づいていると。
「ッ・・・」
下着のホックを易々と外された感覚を覚え、顔を覆っていた腕を僅かにずらし、彼の姿を確認した。
隠すべきは顔なのか、体なのか。
小さなパニックに陥っていると、胸の膨らみに添って彼の指が滑り込んできて。
緊張感と羞恥が最高潮になると、心臓はこの上なく音を立てながら鼓動を重ね、呼吸は乱れる以前に停止を繰り返しているようだった。
「・・・ひなた」
優しい声色に誘われるように、薄ら開いた瞼から彼を見れば、その目で腕を退けるように言われているように感じて。
やはり彼は催眠術師に近いのでは・・・と、誘われるがまま体が勝手に動くように、腕はゆっくりと顔から離れ、彼の袖を小さく掴んだ。