第13章 ノーカウントの数え方※
「あ、りがとう・・・ござい、ます・・・」
ようやく言葉にできたのは、何に対してなのか分からないお礼で。
ただ、彼が満足そうな笑みを浮かべたから良いか、と安堵したのも束の間。
「それはそうと・・・傷、増えてませんか」
そう言いながら、彼は私の体についた傷を一つ一つ確認するように見つめてきて。
そういえば以前、手当をしてもらったことがあったなと思い出しつつ、ここ数日は赤井さんと何度も手合わせをしていたから・・・と返答に困って。
「気のせいかと・・・」
探りを入れないと言ったのは彼だ、と何の意味があるのか分からない言い訳を自分の中でしながら、手を腕に添わせた。
押さえたこの辺りは、よく癖で赤井さんの蹴りを受けてしまうから。
きっと醜いことになっているだろうと思っての行動で。
彼が過去見てきた女性の体とは比べ物にならないはずだ。
失望させてしまっただろうか、と横目で彼を見た時。
「ここ、真新しいですが」
背中側を覗き込んでいた彼の指が、スッと背骨の辺りを撫でた。
「ひゃ・・・!」
くすぐったさと味わったことの無い感覚に思わず背筋を伸ばしながら、自分でも驚くくらいの甲高い声を部屋に響かせて。
「この傷を作った言い訳を聞いても?」
羞恥を感じる間もなく、彼は私に詰め寄りながら、理由ではなく最初から言い訳と決めつけて尋ねてきた。
「こ、転びました・・・っ」
どうせ何を言ったって彼の言う通り言い訳だからと、半ば自棄になりながら言い放って。
綺麗ではないこの体を、これ以上舐めまわすように見られるのはいたたまれなく、両手でそれぞれ腕をつかみ、前身を隠しては彼に背を向けた。
壁に額をつけながら目を瞑り、やはり腹を括るのは今日ではないかもしれないと弱気になっていると。
「そうですか」
「!?」
納得していない声色でそう返されると同時に、彼の唇が肩に触れた。