第13章 ノーカウントの数え方※
顔が近づいてくると、自然と何をするのかが分かった。
目を見れば離すことができず、僅かに口を開くと優しく唇が重ねられた。
「んっ・・・」
・・・息だ、呼吸をしなくては。
そう頭では分かっているが、考えれば考える程どこから空気を取り込めば良いのか分からなくなって。
無意識に唇を離そうとしてしまうが、彼がそれを許さなくて。
「・・・口ではなく、鼻で呼吸をしてください」
見かねたのか、彼は徐に話した唇の隙間から、そう指示をしてくるが。
それができれば苦労はしていない、と乱れた呼吸を繰り返しながら目で訴えた。
「練習、あるのみですよ」
けれど訴え虚しく、呼吸は整わないまま再び唇は塞がれて。
「んう、ン・・・!」
それでは留まらず、舌も口内へと侵入してきて。
再び襲うあの感覚に、服を掴む指を小さく震わせていると。
「!!」
彼の指が胸の膨らみを優しく撫で、その先にある蕾に指を触れさせた。
誰かに直接触れられたことがなく、味わったことのない感覚に思わず体が大きく跳ね、突き放すように彼を押し上げてしまった。
彼にとってみればそれは拒絶ともとれる行動で。
その彼は真顔で見つめ、静かに私の言葉を待っているようだった。
「・・・っ」
勿論、拒絶ではない。
どちらかというと恐怖で。
でもそれを本人に知られたくない。
誤魔化したところでバレる。
沈黙が続けば続くほど気まずいのに、言葉が出ない。
「・・・聞かせてください」
沈黙が数十秒続いた後、彼は小さく微笑み、そう言って。
「素直に、感じたことを」
額同士が触れ合うと、互いの熱を共有しているように感じた。
それと同時に、何故か安心感が込み上げてきて。
「隠される方が傷つきます」
何となくだが、体を重ねるという意味が・・・分かった気がした。