第13章 ノーカウントの数え方※
「わ・・・!?」
答えた数秒後、体を引き寄せられベッドに座らされたかと思うと、勢いよく来ていた服を取り払われて。
あまりにも華麗過ぎた手際に抵抗する間もなく、気付けば上半身は下着姿を晒していた。
冷たく感じる空気が肌を撫で、無防備だという事を伝えてくる。
その肌寒さからくる震えとは違う震えを指先だけに復活させていると、彼はそんな私を静かに見つめた。
腕で体を隠してみるが、限度はある。
部屋に明かりはないが、キッチンから漏れる光が余計に恥ずかしさを増幅させて。
恥ずかしさと気まずさから、目を合わせる事ができない。
「あ、あまり見ないでください・・・」
・・・ああ、本当に昴さんとの特訓なんて、何の意味も無かった。
そう改めて思いながら、懇願してみるが。
「難しい要望ですね」
「!」
私から奪った服をベッド脇に落とすと、ベッドの軋む音を鳴らしながら距離を縮めて。
逃げ場はなく、着実に壁へと追い込まれる状況に、隣の部屋で昴さんに同じように追い込まれたことを思い出しながら、壁に背中をつけた。
「で、では・・・っ、明かり・・・消して頂けませんか・・・」
情けなくも怖気づいた。
その場しのぎという事も理解した上で、一度彼を離そうとして。
「その要望はお聞きします」
素直に私の言葉に従った彼は、再びベッドを軋ませ体を降ろすと、キッチンの電気を消してすぐにそこから顔を覗かせた。
「これで良いですか?」
「・・・・・・」
・・・ああ、彼は勘付いている。
私が無意識に、逃げる理由を探していることに。
本当に逃げたいわけではない。
ただ・・・。
「・・・ひなたさん」
私に背を向け彼がベッドに座ると、そこに沈みを感じて。
背中越しに呼ばれた名前にピクっと反応したが、彼の表情が見えないせいで、感情が読み取れなかった。
「・・・ひなたさんが嫌なら本当にしませんよ」
そう話す声は柔らかく、優しいものだったが。
背中ではそう言っているようには思えなかった。