第13章 ノーカウントの数え方※
「・・・っ、ん・・・!」
呼吸もままならない中、私の口内をゆっくりと彼の舌先がなぞっていく。
それと同時に意識すら持っていかれるようで。
「・・・んぅ・・・ッ」
呼吸が・・・できない。
まともに空気が取り込めない。
鼻から空気を取り込めるはずなのに、何故かそんな簡単な事ができない。
それと同時に襲う、体の異変に耐えられなくなって。
「・・・っま、待って・・・っ」
どうにか体を押し上げながら顔を背け、一気に空気を体内に取り込みながら静止をかけると、肺が突然の供給に耐えられず、何度か軽く咳込んだ。
「・・・すみません」
息苦しさに少し歪んだ表情に不安を感じたのか、優しく頬を撫でながら私の顔を覗き込んで謝罪を口にした。
すぐに返事をすることができず、彼の不安を煽ってしまったかとこちらも不安になり、小さく首を振って。
「違・・・か、体・・・おかしくて・・・」
息苦しさで彼を押し上げたことも間違いではないが、どちらかというと体を蝕む何かが怖くて。
ゾクゾクとする感覚に耐えられず、思わず静止させてしまったのだと伝えたつもりだったが。
彼は盛大な溜め息と共に掌を額に当て、大きく項垂れた。
「・・・それ、素なんですよね?」
何故溜め息をついたのか、何故項垂れたのか、その質問の意図は何なのか。
思考回路もまともに機能していないのに理解できないことだらけだが、素直にその質問に答えるならYESだから。
無言の肯定とし、目を見つめたまま「そうだ」と応えた。
「透さ・・・」
「零です」
これが素ではいけなかったのだろうか、と項垂れる彼に呼びかけようとしたが、そんな事を尋ねるより前に、かなりのスピードで訂正をされた。
「れ・・・零・・・」
赤井さん・・・というより昴さんも、名前で呼ぶことにこだわりを持っていたようだったが。
何故そこまでこだわるのだろうか、と疑問を膨らませていると、今度は笑みを消した表情で、彼・・・零は私を見つめた。
「!」
再び、腹部に違和感。
・・・けれど、さっきまでの恐怖は不思議となかった。