第13章 ノーカウントの数え方※
「は、恥ずかしいからです・・・」
無駄な抵抗と分かっていても、体が自然と彼の体を押し返す。
それなりに力は入れているはずなのに、彼の体はビクともせず、余裕な笑みを返されるだけで。
「では、離れないです」
「!?」
言葉通り、離れるどころか私の押し返す力を物ともしないどころか、更に距離を近くして。
「納得できなかったので」
結局、嫌だと言わない限りは離れるつもりは無いくせに。
・・・私が嫌だと言わない事を、分かっているのが腹立たしい。
そんな彼の事を、少し前まで苦手だと思っていたのに。
「・・・どうしてそんなに楽しそうなんですか」
場数を踏んでいる為、彼に余裕があるのは分かっているが、追い詰めていることに楽しみを覚えているようにも見えて。
降谷零という人間と話しているより、バーボンと話しているような感覚だった。
「楽しいもそうですが・・・どちらかというと浮かれているんですよ」
不服の表情を向ける私の頬に、また彼の手が触れて。
優しく撫でるように親指が頬を滑ると、そちら側の瞼だけが軽く下りた。
「僕を・・・僕だけを、見てくれていることに」
・・・優しい声色と、目つき。
これが、本来の彼なのだろう。
「・・・・・・」
彼の好意はきちんと受け取り、理解しているつもりだけど。
自らの命を懸けて国を守り、危険なことにも自ら飛び込んでいく。
優しく、完璧で、何でもそつなくこなす彼が・・・何故、私なんかを、という疑問だけが残る。
彼が私へ魅力を感じる部分が、無いと思うのだが。
「・・・好きですよ」
「ッ・・・」
彼の目を見ながら脳裏でそんな事を考えていると、彼から徐ろに、何度目かの告白を受けた。
心の中を読まれたのかと一度大きく心臓が跳ねると、彼を押す手が小さく揺れてしまった。