第13章 ノーカウントの数え方※
・・・零・・・そうか。
彼のあだ名はゼロだった。
数字のゼロと、れいを掛けているのか。
彼をそんなあだ名で呼ぶという事はやはり、スコッチとは相当・・・。
「・・・?」
脳裏でそんな事を考えていて、ようやく気が付いた。
彼の表情が、少し変わっていたことに。
部屋の明かりがキッチン側にしか灯されず、薄暗いせいではっきりとは分からないが。
何となく、赤みを帯びて恥じらいを感じているようにも見えた。
「すみません・・・」
何故彼がそんな反応をし、謝るのか。
寧ろ少し恥ずかしいのはこちらなのだが・・・と、口元を拳で隠す珍しい彼の姿を見つめた。
「・・・あまり、見ないで頂けると助かります」
覆い被さっていた体を退かし、私の隣に腰かけたのを見て、私も体を起こしベッドに腰かけ直した。
やるなと言われればやりたくなるのが人間の性で。
増してやここまで興味の惹かれる事も中々無い。
いつも余裕のある、私が劣等感や羨ましさを感じるような彼が、名前を口にしただけでこうなっている。
組織にいる頃は考えられなかったことが目の前で起こっている事に、信じられなさと嬉しさがあって。
・・・今だけ。
今だけは・・・。
「いえ・・・透さんの恥ずかしがる姿が珍しいので、目に焼き付けておきます」
FBIとしての自分を・・・忘れても良いだろか。
「・・・・・・」
そんな私の興味を感じ取ったのか、彼は僅かに呆れのような眼差しを向けて。
「それだから、不安になるんですよ・・・」
「?」
盛大な溜め息と共に吐き出したその言葉に心当たりが無さ過ぎて、大きく首を傾げた。
この探求心に近い興味がいけないのかと考えを巡らせていると。
「煽ってないんですよね?」
「煽・・・」
透さ・・・零さんに。
そう確認された。
どの辺りが煽りになるのかは分からないが、そういう事かと彼の不安は察した。