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【安室夢】零番目の人【名探偵コナン】

第13章 ノーカウントの数え方※




「ひなたさん」

数秒・・・いや、数分だったかもしれない。
長くも短くも感じた沈黙の後、透さんは私の名前を呼んで。

「ッ!」

それに反応し顔を上げた瞬間、頬に僅かな痛みが走った。

彼の指が頬に貼られたガーゼに伸ばされ、撫でられたことによるものだった。

「痛みますか?」

否定するには、先程の私の反応が根拠を薄くさせる。
かといって、騒ぎ立てる程の痛みでもない。

「いえ・・・もう・・・」

それ程ではない、咄嗟だったから驚いたのだと言いかけたが、彼の体が一歩、私に近付いて。

反射というのか必然というのか、私の体も自然と一歩下がったが。

彼の足は何故か止まらなくて。

「あ、の・・・透さ・・・っ」

追いやられている。
それに気づいた時にはもう、私はベッドに押し倒される形で寝転んでいて。

「・・・・・・っ」

ベッドに倒れる寸前に閉じた瞼をゆっくり開くと、透さんが覆い被さる形で私を見下ろしていた。

真っ直ぐと私だけを見つめる瞳から、目が離せない。
何か、催眠術にでもかかったようだ。

言葉も出せず、指一本も動かせないでいると。

「!」

彼は突然、深い溜め息と共に私に倒れ込んできて。
大きく体重は預けていないが、それでも僅かな重みが感じられた。

「と、透さん・・・?」

僅かに頬を彼の髪が擽って。
何だか懐かしいような匂いがした気がして、何故か安心感を覚えた。

「すみません、少しだけ・・・こうさせてください」

・・・珍しい。
彼がこうして無防備な姿を見せることは無かったから。

空気が抜けた風船のように力の抜けた透さんに、行き場の無くなった手を添わせようとした時。

「ひなたさんが好きだと言ったこと、疑っていますか」

体勢は変えないまま、そう尋ねてきた。
伸ばしかけた手はピタリと動きを止め、再び行き場を無くしてしまって。



 
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