第13章 ノーカウントの数え方※

そういえば、工藤邸で昴さんは何故私がああなったのか疑問を持たずに対応していた。

無論赤井さんは私のトラウマを知っている為対処できたのだが、知らないふりもできたはずだ。

･･･もしかして、わざと透さんに気付かせたのだろうか。

「･･･はい」

どっちみち、もうしらばっくれるのは難しい。
透さんにとって良い情報とは言えないだろうが、隠しておいても良いとは思ないから。

正直に、あくまでも沖矢昴が、という前提で答えた。

「そう･･･ですか」

やはり返ってきたのは少し不服そうな声色で。
だとしても私にこの件は、どうすることもできないが。

「では２つ目です。どうしてあの後、こっちには戻らなかったんですか」

あの後。
キュラソーの件の後、という事か。

正直に言えば、FBIに対する透さんの敵意が怖かった。
でもそんな事言えるはずもない。

今回の事で昴さんへの何かしらの懸念は深くなっているだろうし、何をどこまで答えれば良いのか、この状況で判断が鈍っている状態では答えを導き出せない。

「･･･僕に、会いたくなかったから？」

押し黙っていると、彼は一つの答えを提示して。

透さんにとってはそう思っているのか、そうじゃなければと思っているのかは分からないが。

「･･･それも、あります」

大部分はそうだ。

「その理由を、聞いても？」

彼がどういう理由でそう思ってのか聞いてみたい所ではあるが･･･。

今は誤魔化す以外に無い。

「･･･傷を、見せたくなくて」

FBIだと言われるんじゃないか。
私の言動1つでバレるんじゃないか。

それが怖かった。

･･･なんて、言えなかった。

「･･･そうですか」

不服そうだ。
でもこれ以上明かすつもりもない。

これがお互いにとって最適なのだと、何度も自分に言い聞かせた。