第13章 ノーカウントの数え方※
「・・・質問の答えとしては少し不十分かもしれませんが」
そう前置きをして、彼は言葉を続けた。
「ヒロへの気持ちを確かめる為・・・スコッチが気持ちを伝えられなかった無念を晴らす・・・というのは、僕の勝手な判断ですが」
・・・無念を晴らす、そういう意味だったのか。
勘違いとはいえ、やはり想像したようになる可能性はきっとゼロではない。
赤井さんへの態度を見ていれば、痛い程分かる。
「伝えておけばよかったと嘆いていたので、勝手なお節介をしました。多分、あっちで叱られると思います」
そんな事まで話すような仲だったのか。
そもそもスコッチにそんな気持ちを向けられていたなんて、微塵も気づかなかった。
・・・本当に、酷なことをした。
「・・・もう一つ、確かめたい真相もありましたしね」
「?」
抱きしめていた体をお互い顔が見える位置まで離し、彼は私の目を見つめながら付け足した。
何を?と視線で返せば、彼はフッと笑みを零して。
「僕の気持ちです」
「透さん、の・・・?」
確かめる、ということはスコッチと同じ気持ちが?と、ハッキリ尋ねたかったが、透さんの視線がそれを許していないように思えて。
開きかけた口をそっと閉じた。
「他に聞きたいことは?」
やはり、濁された気がする。
確信を突かれたくないのだろうか。
この際別にこれくらいはどうでも良い上に、こちらから聞けば何かボロが出てしまう気がして。
「・・・逆に、透さんが聞きたいことはありますか」
今は透さんが何を思い、何を気にしているのか。
それを知れれば良いと思った。
「山ほどありますが、2つ聞かせてください」
体は彼の腕に固定されたまま。
逃げることも許されない状況で、彼は迷いなくそう前置きして。
「あの男も・・・ひなたさんの過去の事を、知っているんですか」
「!」
僅かに笑顔が薄れた表情で、淡々と聞いてきた。