第13章 ノーカウントの数え方※
「お互い何も知らない状況であれば、僕を選びそうな所ですから」
その考えが無かった訳ではないが・・・あの時のバーボンは私と立場が似ていたからこそ、頼みたくなくて。
「スコッチから・・・聞いたんですか」
スコッチを最初の相手に選んだ時、確かにバーボンは傍に居た。
でも話は2人の時にしたはずで、彼は他言しないと約束もしたはずなのに。
組織にいる間、この話が出回ったことは無い。
スコッチに非はないが、どこか裏切られたような気持ちに、胸が苦しくなった。
「僕が問い質したんです。かなりズルい聞き方をしたので、彼は悪くありませんよ」
・・・一体、どんな聞き方をしたのか。
バーボンにはバレたものの、スコッチがあの約束を守ってくれていたのだと分かって少しは安堵したが、今の状況はそんな事言っていられる場合でもなくて。
「スコッチの気持ちには気が付いての誘いだったんですか」
「・・・?」
気持ち・・・?
何の、どういう、と首を少し傾けると、透さんはどこか安心したように微笑んで。
「スコッチはひなたさんに好意があったんですよ」
「!?」
そんなばかな。
・・・とは、言えない。
それはスコッチにしか分からない事で、それを直接聞いた者しか否定も肯定もできない。
「だから最初は、彼を弄んでいるんだと思っていました」
「違・・・っ」
透さんの言葉に強く言い返しながら、その場に立ち上がって否定の姿勢を見せた。
必死過ぎにも思えるそれに、彼は一瞬目を丸くしたが、すぐに笑顔に戻って。
「分かっています」
瞼を閉じ、スコッチを思い出すように彼は穏やかに納得の言葉を口にした。
「彼も分かって拒んだんです」
私に・・・スコッチに対する気持ちが無いから。
それはきっと、初めてだからということも含まれていたとは思うが。
最低なことをお願いしてしまったと後から思ったが、その上すごく無神経なことをしてしまっていたことに、今更気付かされた。
きっと・・・酷く傷つけたはずだ。