第13章 ノーカウントの数え方※
「彼の無念を晴らす・・・と言うと、少し語弊があるかもしれませんが」
「・・・ッ・・・」
その言葉に、体温が一気に下がった。
スコッチを組織から排除したのはライ・・・赤井さんのはずだ。
透さんはスコッチを赤井さんが撃ったと思っているのかもしれないが、実際はスコッチの自害だった。
その件で透さんは赤井さんを、そしてFBIを憎んでいる。
仮にスコッチが自害だと気付いていても、それを止められなかった赤井さんに怒りを向けているのかもしれない。
その彼の無念を晴らす・・・。
そもそも、透さんと私がポアロで再開したとき、赤井さんの死の偽装は限られた人間しか知らなかった。
透さんも、例外ではないはずだ。
だから赤井さんに直接、無念を晴らすことはできない。
でもFBIには憎しみを持っている。
それは幾度となく隣で感じている。
その中で私を探し出し、無念を晴らしに来たという事は。
・・・透さんも、私の正体に最初から気付いていたという事?
「ちょっと・・・待ってください・・・」
透さんの言葉の先を聞くのが怖くて。
呼吸が乱れそうになるのを必死に抑えながら、そっと彼から視線を外した。
公安から情報を探るつもりだったのに。
もしかすると私が窮地に立っているのかもしれない。
「・・・スコッチとのことは、嫌な思い出ですか?」
スコッチとバーボンが組織にいる頃から、彼らの仲間以上の仲の良さは何となく感じ取っていて。
「いえ・・・」
だからこそFBIへの憎しみは底知れなくて、私が分かってあげられるものでもなくて。
その恨みや憎しみは、決して私も逃れられるものではないのだと、突き付けられた。
「・・・貴女がスコッチを選んだ理由を、聞いても良いですか?」
「!」
これ以上何を問いただされるのだろう、何を咎められるのだろうかと身構えていると、彼は徐ろに尋ねた。
選んだ、と言われるとそれにこそ御幣を感じるが、そんな事よりその事実を何故知っているのかと、彼に視線を戻した。