第13章 ノーカウントの数え方※
「彼は、君に会いたがっているがな」
「!」
透さんが?
一瞬、喜びにも似た感情を抱きかけたが、そんな事、赤井さんに分かるはずもない。
さっきまで自分は何を考えていたんだと、すぐに我に返った。
「・・・そうでしょうか」
仮にそうだとしても、FBIかどうか確認したいだけかもしれない。
今回の件で、何か聞きたいことがあるだけかもしれない。
単純に私に会いたいから、なんてそんな都合よく理由をつけた自分が、酷く恥ずかしい。
パッと上げた顔をゆっくりと落としながら、拳に力がこもった。
「君のスマホの電源を落としているせいか、何度もここに来ている」
「!?」
赤井さんの言葉に再び驚き、カップの紅茶を大きく揺らして。
まさか、さっきの言葉に根拠があったなんて。
「し、知ってるんですか!?私がここにいる事・・・!」
「言わないが、勘付いているのだろうな」
・・・それも、そうか。
あの部屋に戻らなければ、ここにいることも想定される。
昴さんの事を怪しんでいる彼なら尚更。
そんな事にも気づいていなかったなんて。
「・・・一度、会っておけば良いと思いますよ」
「!!」
段々と沈んでいた顔は、彼の変化に引き上げられるように勢いよく上がって。
先程まで赤井さんだった彼の声、はいつの間にか沖矢昴と化していて。
声と話し方が違うだけで、こうも別人だと錯覚してしてしまうのは、やはり赤井さんがすごいからなのだろうか。
「あ、会うって・・・」
何故、突然沖矢昴として話し始めたのかは分からないが、戸惑いながらも何を理由に?と目で尋ねた。
「でなければ、ずっと付き纏われるだけですからね」
それは・・・そうなのだが。
今は、言葉が出てくるかすら不安だ。
公安や組織の情報が得られるかもしれない、パイプ役としての仕事がある為、彼と連絡を絶つことはできない。
・・・できないけど。