第13章 ノーカウントの数え方※
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キュラソーの件から数日が経った。
赤井さんに言われた通り、私はあのまま工藤邸に居座っていて。
自分でするという申し出を毎回却下され、毎日赤井さんに頬の傷の手当てをされ、時折あの地下で手合わせをする日々。
「痛みはどうだ」
「そもそも、大したことないですから」
今日も手合わせと手当てと遅めの昼食を終え、昴さんの姿をした赤井さんが紅茶の乗ったトレーを持って部屋へと来て。
この生活にも少し慣れが出て、赤井さんがするといったことにはあまり口を出さないようになった。
どうせ、押し切られてしまうから。
今日もこうして紅茶を入れてもらうことに恐縮さは感じていたが、ありがたく受け入れるようになっていて。
「・・・今日は、解かないんですか?」
「ちょっと野暮用があってな」
いつも手合わせを含む外出時は沖矢昴の姿で出掛ける。
ただ、家に戻ればその変装は早々と解いているのに。
今日は何故かそのままでいて。
そうか、今日はこの後1人になるのか・・・と彼が入れてくれた紅茶を一口含んだ時だった。
「俺がいなくて寂しいか?」
「・・・!」
思わず、紅茶が噴出されてしまう所だった。
その反応に、彼は大変満足そうで。
最近の赤井さんは、どうにも私を弄ぶことに楽しみを感じているようだ。
日々私を惑わすようなことを言っては、その反応を見ている。
そもそもこんな冗談を言う人でも、言葉で表すような人でもなかったと思うのだが。
「どうなんだ?」
声は赤井さん。姿は昴さん。
どう返事をすれば良いのか、脳が完全に混乱していて。
黙っていれば肯定することになってしまうのだが、ただただ困惑の眼差しを向ける事しかできなかった。
そんな私に赤井さんは小さく笑いかけると、彼は優雅に紅茶を口にした。
「・・・・・・」
傷も目立たなくなってきた。
そろそろポアロに戻っても良い頃だ。
そもそも私には江戸川コナンの監視と、公安から情報を得ることを任務としているのに。
・・・今のままでは、FBIすら名乗れない。