第12章 LikeはLoveか、別物か
「そろそろ抜け出せそうだな」
赤井さんの言葉に外へ目を向けると、次第に渋滞が緩和してきているようで。
多少時間は掛かるかもしれないが、確かに今ならこの場を離れられそうだ。
公安も、さっき襲ってきた男達もまだこの場をうろついているかもしれない。
ただでさえ捜査権が無い日本だ。
早めに去った方が良い、とエンジンを掛ける赤井さんにふと目をやった時だった。
「!!」
ハンドルに置いた彼の右手に、酷い怪我を見つけて。
「赤井さん!手・・・っ、怪我してます・・・!」
「・・・どうってことない」
どこかから落ちる際に、手で滑りを止めたような・・・ある程度出血は落ち着いているようだが、安堵できるような状態では無くて。
「ダメです!後ろ開けますよ、消毒液と包帯持ってきてますから」
その程度では到底どうにかできるものではないが。
気休めでもしないよりはマシだ。
助手席から慌てて降りると、トランクからポーチを取ってすぐに戻った。
「手、出してください」
スナイパーにとって掌の怪我は命取りだ。
聞き手でないことが唯一の救いだが、それでもこの怪我は見過ごせない。
「それがあるなら、ひなたの怪我を先に・・・」
「ダメです!早く手出してください!」
私の頬の怪我なんて大したことない。
そもそも、私が怪我をすることと赤井さんが怪我をするのではFBIにとっては意味が大きく違う。
私の勢いが通じたのか、赤井さんは半ば渋々右手を差し出して。
一緒に取ってきたタオルの上に赤井さんの手を置くと、軽く汚れを拭き取って。
痛々しいそれに顔を顰めながら消毒液を吹きかけ、ガーゼを当てては包帯を巻いた。
「・・・本当に応急処置ですから、明日絶対に病院へ行ってください」
「君がついて来てくれるならな」
・・・冗談が言える程度なら、本当に他に怪我は無いのだろう。
赤井さんと話しているというよりは、どこか昴さんと話しているような気分になりながら、小さく溜め息を吐いた。