第12章 LikeはLoveか、別物か
相手から・・・殺意が伝わってこないから。
今までこうして戦闘になってもフラッシュバックが起こらなかったのは、相手から殺意が伝わってきたからだ。
でも、目の前の男達からは私を捕らえるという気持ちしか伝わってこない。
だから私にフラッシュバックを起こさせた。
「!!」
お互いの出方を伺う最中、観覧車方面から突然大きな音がして。
その場にいた全員がその方向に目を向け、目を見開いた。
・・・2輪向かい合うようにある観覧車のうち1輪の観覧車が・・・外れている。
それはゆっくりと転がり始めていて。
被害の大きさに顔を顰め、慌てて男達に視線を戻した時だった。
「・・・?」
男達が・・・ざわめいている。
互いに顔を見合わせ、耳につけたハンズフリーイヤホンで指示を仰いでいるようだった。
それを今だ、と確信すると、全速力でその場を去った。
案の定男達が数人追ってきたが、茂みや低い場所を経由して逃走すれば、最初の差がある分、撒くのは容易だった。
・・・皮肉にも、体格が有利に働いた。
「・・・っは・・・はぁ・・・」
赤井さんの車からはかなり離れた位置に来てしまった。
念の為、建物の陰に身を隠しながら、相手の気配を感じ取って。
どうやら上手く撒けたようで、遠くから聞こえるサイレンと騒々しさだけが微かに伝わってきた。
気になっていたが余裕が無く見ることができなかった観覧車に目をやるが、建物や観覧車に遮られよく確認ができない。
・・・ただ、その動きは何かに押し動かされたように、動きを弱めていて。
赤井さんやコナン君は無事だろうか。
・・・透さんも、あの後どうしただろうか。
乱れ散らした呼吸をある程度整え、辺りへの警戒心は解かないまま赤井さんの車へと再び走り出しながら、不安を募らせた。
ようやく辿り着いた赤井さんの車の運転席に乗り込めば、その座席の見合わなさから、再び体格への劣等感を感じて。
小さくため息を吐きながら周辺の状況を調べていると、パニックで併設している水族館や周りの道路は混雑していることを把握した。
ここへ来るには1本ある橋を渡ってくるしかない。
この場を離れるなら、暫く身を隠した後の方が良いかもしれない。