第12章 LikeはLoveか、別物か
「ッ・・・」
ぬるすぎる。
相手から本気さが伝わってこない。
手を抜かれているというよりは、気絶程度を狙おうとしてきている。
だからなのか、男達は拳銃や鉄パイプなどの道具を一切使わない、素手のみで戦ってくる。
「・・・・・・」
一度間合いを取り、息を整えながら顎へと流れついた汗を無造作に手の甲で拭って。
何度も足の付け根に隠し持っている銃に手が伸びかけたが、その度その手を拳に変えた。
今この状況で取り出すにはあまりにもリスクが大きい。
せめて相手が何者か分かれば手っ取り早いのだが。
早くここを離れなければ、諸々不都合だ。
とりあえず一人ずつ制圧するしかない、と男達の立ち位置を確認した時だった。
・・・1人、足りない。
「!!」
それに気が付いた時には、もうその男は背後に居て。
避けるのが遅くなった上、体勢が上手く整えられず、右の頬に勢いよく男の拳を受け、体は宙を舞った。
「・・・ッ、ぐ・・・!」
コンクリートの地面に叩きつけられた体は一瞬痺れのような痛みを全身に走らせたが、すぐに起き上がり何とか間合いを保った。
口内に鉄の味が滲み、頬の痛みが段々と増してくる。
赤井さんは手合わせの時、決して顔を狙わない為、顔の痛みは久しぶりのように感じられた。
「・・・ッ」
先程の打撃のせいで少し脳が揺れたのか、視界が一瞬歪みを見せて。
そのせいで表情が歪んだのを、男達は見逃さなかった。
「ッ・・・!」
一斉に襲い掛かってきた男達に一瞬、あの日のトラウマがフラッシュバックして。
普段はそんなことないのに。
何故、今。
「や・・・」
足が・・・動かない。
動かなければ捕らえられるのに。
・・・捕らえ、られる。
「・・・ッ・・・!!」
一瞬の気付きが震えが起こる体を何とか奮い立たせ、男の隙間を縫って何とかその瞬間は切り抜けた。
・・・何故、フラッシュバックしたか。
その理由に、気付けたから。