第12章 LikeはLoveか、別物か
「・・・ッ」
・・・逃げ出してしまった。
走る最中、どんな感情よりもその罪悪感が強く滲んだ。
これが最適解でこうするしかなかったのだと頭では分かっているが、この選択肢しか出せなかったことが申し訳なく、情けなく、不甲斐なく。
なるべく音を立てないように瓦礫をすり抜け、軋む音を立てる観覧車を横目に、赤井さんの車まで足を進めた。
こういう時は小柄で良かったと思えるが、そう感じる場面はそう多くない。
「!」
・・・こうやって、早速不利な状況に出くわす。
突然、どこからともなく現れた数人の男達が私の目の前に立ち塞がって。
靴底を地面に擦り付けながら急停止すると、男達を睨むように端から順に確認した。
「少々、ここでお待ち頂けませんか」
男の1人が不躾にそう私に言ってきたが、従う理由はどこにもない。
そもそも、この男達は一体何者なのか。
「・・・誰の指示ですか」
「・・・・・・」
私の問いに、彼らは何も答えなかった。
答えられないのか、答える必要がないと思っているのか。
このまま逃げるか、男達を黙らせて通るか。
二択あるようで、障害物の少ないこの場所で逃げることはほぼ不可能だ。
視線は男達を捉えたまま、1つ大きく深呼吸をすると、赤井さんから叩き込まれた通りの構えをしてみせた。
私の戦闘態勢を見た男達も、各々戦う姿勢を見せて。
どういう状態であれ、どうしても私をここに留めておきたいのだなと確信した。
目の前には4人。
だが、近くに茂みにまだ2人気配を感じる。
観覧車付近から様々な雑音が届く為、気配を感じ取りにくいが、少なくとも近くに6人はいる。
・・・正直、1人で対処できるかは不確かだった。
「・・・ッ・・・」
男の1人が腹部目指して拳を振ってきたが、避けつつ別の気配に気を配り、違う角度から仕掛けてきた男のみぞおちへと一発拳を入れた。
赤井さんの指導に比べればぬるいものだった。
ぬるい・・・のだが。