第12章 LikeはLoveか、別物か
「赤井さ・・・」
「ウェルシュ」
彼の名前を呼びかけた時、遮るように赤井さんは懐かしく感じる声色と名前で私に静止を掛けた。
「油断するなと、再三言ったはずだが」
その言葉に、昴さんの姿が過った。
確かに、身をもってそれは何度も注意されてきたが。
やはり赤井さん相手にそれは発動しなくて。
「・・・っ」
何故か彼が掴む手の力が強められ、恐怖に似た感情で体がピクリと反応した。
同時に、確実に近づいてくる足音が耳に届いて。
早く離れないと、透さんが・・・という心配虚しく、息を切らした彼は、赤井さんに捕まり身動きが取れない私を見つけてしまった。
「赤井・・・ッ!!」
怒りを最大に含んだ声色で名前を口にしながら、透さんはこちらに近づいてきて。
咄嗟に腕を引き抜こうとするが、ビクともしない。
何故離してくれないのかと、顔を上げた瞬間、視界の端に透さんが拳を作っているのが見えて。
「透さん!!」
思わず、彼を止めてしまった。
それが正解だったのかも分からないまま。
「・・・彼女から離れろ、赤井」
私の静止に彼は動きをピタリと止め、低く怒りを最大限に含んだ声で、赤井さんにそう言い放った。
「彼女にはまだ聞きたいことがあるんでね」
だがそれに対し、赤井さんは不敵な笑みを薄ら浮かべ、どこか煽るように言い返して。
「そうする必要はないはずだ」
「逃げる相手を捕まえるのは当たり前だろう」
・・・一体、何の言い合いなのか。
何の意味も持たない現状に、ただただ冷や汗を流すしかない中、私を拘束する赤井さんの手の力が、僅かに緩んで。
それが故意だということはすぐに分かった。
この場を離れろという合図だという事も。
「!!」
その場にしゃがみ込み、赤井さんの拘束から逃れると同時に2人の視界から一瞬姿を消して。
蹴り出すように走り出すと、そのまま振り返らず観覧車から離れた。