第12章 LikeはLoveか、別物か
「そこに居てください!!」
彼からのその言葉に、思わず目を見開いた。
聞こえるはずない、聞かせるつもりもない。
そんな声量だったのに。
恐らく彼は私の声を確実に聞き取っていて。
迷いなく下方へと足音を進めていった。
「・・・ッ」
どうして。
どうして、貴方は。
私を・・・見つけるのか。
それは彼が公安で、私を探す理由があるからなのに。
少し、少しだけ。
自意識過剰になってしまう自分がいる。
「!」
彼の足音の方へ見上げていた時。
微かに別の足音が近くから聞こえた。
咄嗟に身構えたが、すぐにその足音の正体を知ることになった。
「・・・赤井さん?」
独特なそれに耳馴染みがあり、彼が姿を現す数秒前に答えを口にすれば、赤井さんはそっと静かに私に近づいた。
「怪我は無いな」
「・・・はい」
赤井さんも多少は傷があるが、大きな怪我は無さそうだ。
胸を撫で下ろしたのも束の間、パラパラとまだ瓦礫が落ち始めていて。
「時期のここは崩壊する。ひなたはここを離れて、近くまで車を回しておいてくれ」
「・・・・・・」
それは・・・もう、私にここでできることは無い。
そう、言われているようで。
反論する理由も、資格もない。
赤井さんの指示通り動くのが正しいと私も分かっている、が。
「・・・っ」
最後まで、傍で見届けさせてほしい。
そんな我儘が出てしまいそうで。
とことん、私はFBIという組織に向いていないのだなと痛感した。
「!」
了解と返事をしかけた時。
透さんの足音がすぐそこまで来ていることにお互い気が付いて。
赤井さんといる所を見られるのは不都合はないが、面倒なことにはなるかもしれないと、慌ててその場を離れようとした時。
「!?」
何故か赤井さんに腕を掴まれ、壁に追いやられてしまった。
力で彼に敵うはずもなく、彼の影が私を覆う中、静かに赤井さんは私を見下ろした。