第12章 LikeはLoveか、別物か
「ひなたさん!!」
足元が大きく揺れ、バランスを保つのも難しくなってきた。
立てば倒れてしまう為、姿勢を低くしたまま手すりに掴まっていると、透さんは私の方へと手を伸ばしてきて。
「・・・ッ」
この手を取っていいのか。
何故か迷いがあった。
それでも取る選択を取るしかなく、そっと片手を手すりから離した直後。
「!!」
「ひなたさん!?」
手すりへの縋り虚しく、足場ごと崩落してしまった。
彼の手を握る事は間に合わず、瓦礫ごと私は落下を始めた。
落ちる速度はとてつもないが、こういう時程意外とスローモーションのように見えるもので。
一周見回すように内部の現状を確認すると、まだ崩落の進んでいない足場へと飛び移った。
「・・・っ・・・」
・・・赤井さんとコナン君の様子を確認できなかったが、無事だろうか。
一応脳内でそんな心配をしてみたが、無事なのは何となく分かっていて。
これから彼らがどうするのだろうかという考えが次第に先行していった。
「・・・・・・」
それより、だ。
私はどうすべきか。
無力無能過ぎる自分へ、眉間にシワが寄るばかりで、考えが出てこない。
コナン君の動向を監視する、公安の動きを知る、そんな簡単な仕事すらこなせない。
・・・一体、私は何ならできるのか。
苛立ちに任せて壁を殴れば、拳と壁がぶつかる鈍い音と共にジワリと痛みが伝わってきた。
「ひなたさん!無事ですか!!」
「!」
冷静にならなければと自分を収めていると、上部から透さんの呼ぶ声が響いてきて。
暗闇と瓦礫のせいで姿は見えない。
音が反響しすぎるせいで正確ではないが、何となく・・・彼の居場所が分かるようだった。
「・・・透さん」
彼の質問には返事をしないまま、応えるにはか細過ぎる声で彼の名前を口にした。
私は、どうすればいいですか。
そんな情けない質問まで、出てきてしまいそうな始末で。