第12章 LikeはLoveか、別物か
「それと」
観覧車と水族館の明かりが目立つ空色になっている中、車はもうすぐそこへ辿り着こうとしていて。
追加で何かを言おうとする赤井さんに目をやれば、時々街灯の明かりが彼の横顔を照らしていた。
「まだ、君がFBIだということは隠しておくんだ」
それは、透さんに・・・ということだろうけど。
「・・・どうしたんですか?」
それは指示が無くても、そうしていたが。
何故、念押しされたのだろう。
「いや」
短く返されたそれに頭を傾けながらも、私が頼りないせいか、と自己解決して。
FBIとしても、公安からの情報があるに越したことはない。
私の透さんに対する気持ちは赤井さんに伝えていないが、これも隠せるなら隠しておいた方が賢明かもしれない。
そんな事を考えているうちに、車は水族館近くへと停められた。
「・・・ひなた」
「はい」
車を降り、ライフルバッグをトランクから取り出した赤井さんに、徐に呼び出されて。
何か運ぶものがあるのかと赤井さんに小走りで駆け寄り、彼の目の前に立とうとした時だった。
「!?」
赤井さんの指が、私の額をでグッと押した。
咄嗟の事と思いの他強い力だった為、私の体はよろけながら数歩下がって。
彼らしくない行動と、何の意図があってそうされたのか理解が追い付かず、僅かに押された感覚の残る額に手を当てながら、赤井さんに視線を向けた。
「あまり安室君に気を取られるな」
その言葉に、反省と羞恥が一気に押し寄せ、気付けば頭を下げていた。
「・・・すみません」
確かに、FBIとしてではなく自分自身としての行動が、強めに出過ぎていたかもしれない。
私情を挟みすぎていた。
「俺は観覧車へ向かう。君は内部の調査を頼んだ」
「・・・はい」
車内で、どれだけFBIとしての顔を失っていたのだろう。
・・・いや、もっと前からか。
情けなさもここまでくると、自分への興味を無くしてしまう事を、今初めて知った。