第12章 LikeはLoveか、別物か
一瞬呆気にとられたが、今は急いでついていかねばと周りを気にしながら駆け寄り、赤井さんに続いて車に乗り込んだ。
「了解」
僅かに先に車に乗り込んでいた赤井さんは、誰かとハンズフリーイヤホンで会話していたようで。
恐らくジェイムズさんだろうが、少しの気まずさの中、視線で何かあったのかと尋ねた。
「東都水族館に向かう」
「水族館・・・ですか?」
水族館というと、コナン君がキュラソーと接触した場所のはずだ。
ただ、今から何の用で向かうのか。
「ジンがそこへ向かうよう、指示をした。公安がそこへキュラソーを連れていくことを読んでいたようだ」
「!」
私の疑問を感じ取った彼は、そう答えを示して。
公安が・・・わざわざキュラソーを?
記憶を取り戻そうとさせているのだろうか。
「安室君もそこに向かったはずだ」
・・・透さんも、向かった。
と、いうことは・・・。
「無事・・・なんですか・・・」
「ああ。キールは肩を撃たれたが、これからジョディ達が救助に向かう」
キールも・・・そうか・・・無事だったんだ・・・。
「良かった・・・」
声に出したかどうか分からない。
それ程絞り出したものだったと思う。
まだ完全に安心はしきれないが、まずは逃れることができたのだと思うと、全身の力が一気に抜けた。
「ボウヤと博士に、礼を言わなければな」
「・・・?」
何故コナン君と博士に?
と、疑問符を浮かべる私に、水族館へ向かう車内で何故バーボンが逃れることができたのか、その経緯を軽く説明されて。
「・・・本当に、コナン君って何者なんですか」
彼がいなければ、今頃どうなっていたか分からない。
それ程までに、彼の行動は私の予測の範囲を超えていて。
「さあな」
フッと笑みを浮かべる赤井さんの横顔は、どこか楽しそうにも見えて。
・・・赤井さんの期待に応えられるコナン君に、みっともなく軽く嫉妬の感情を覚えた。